
ぼくのママは、変わった人です。
さっきまでまっすぐ歩いていたのに、
家に帰ってきた瞬間、急にしゃがみます。
なぜか目線を低くして、
顔を近づけてきます。
しかも、声が変わります。
外にいるときの声とは、
まったく別の声です。
「ハ〜ル〜ぅ〜〜〜」
ちょっと長いです。
ぼくは毎日聞いていますが、
まだ慣れません。
しかも、目がキラキラしています。
数秒前まで真顔だったはずなのに、
家のドアを開けた瞬間、
急ににこにこします。
人間って、スイッチがあるんでしょうか。
兄ちゃんも似ています。
帰ってくると、まずぼくを見ます。
カバンを置くより先に、
ぼくの頭をなでます。
人間の優先順位は、たぶん変です。
ぼくはいつも思っています。
そんなに急がなくても、
ぼくは逃げません。
でも、ママは毎日しゃがみます。
たぶん、あれがママの安心のポーズなんだと思います。
だから今日も、しゃがんできたら、
ちょっとだけ顔を近づけてあげます。
人間は、そうすると嬉しそうだからです。
